院長 鈴木裕之がつづるブログです。院長がその日の気分に合わせて、書きつづっていくモノローグです。読んだ感想をどしどしお寄せ下さい。「コメント」をクリックすると書き込みができます。

「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった」。川端康成の名作「雪国」の書き出しだ。忽然と現れた雪国の情景に驚きつつも、日常では味わえない白銀の世界になにか新しいことが起こるかのような期待感を感じさせる文だ。冬になれば雪が降ることは皆が知っていても、私のように毎日、雪の中で生活する人とめったに雪を見ることすらない人では雪に対する感情は大きく異なっているのだと思う。先日の天声人語には「この国では、陽光に恵まれた冬晴れ地帯と雪国とが背中を合わせている。たとえば上越国境を抜けるのに列車で1時間とかからない。そのわずかな距離で、人々の暮らしも、雪を見る目も一変する」とあった(朝日新聞 2011/1/22付)。
私が一浪して、東京から受験のために新潟県の実家に帰る時も同じ状況に出くわした。今から36年前、上野駅から急行「佐渡」に乗りこんだが空席はなく通路に立ったまま、「国境の長いトンネル」である清水トンネルを抜けた。車内が急に明るくなると同時に「わぁ〜、雪だ! 素敵〜」「きれ〜い、真っ白!」と車内の所々で歓声が上がった。浪人の身という立場であることを差し引いても、久しぶりの故郷が近づいたといううれしさを完全に吹き飛ばすくらいのギャップを感じ驚いた。
話かわって、先日、関東地方から秋田に転勤となり始めて秋田の冬を経験するという製薬会社の担当者がクリニックを訪れたときのこと。その日はかなりの好天であり、彼は開口一番「先生、秋田にもこんな天気のいい日があるんですね。冬に太陽が顔を出すなんてないのかと思ってました」と言った。地元を去るときに「秋田の冬は暗く寂しい」というイメージを相当にたたき込まれたらしい。私には『自分はこんなたいへんな地に転勤となってかわいそうなんです』というように聞こえ、自分でも意固地だなと思いつつこう反論した。「秋田の冬だってちゃんと晴れる日はありますよ。雪の日があるからこういう天気の日がとてもありがたく感じるんですよ。東京みたいに乾燥注意報が出るカラカラ天気が毎日続くよりいいでしょう」。彼は一瞬、戸惑いの表情を見せ、すぐに仕事の話を始めた。
確かに雪は生活の支障になることもあるが、その雪とどうつき合うかという生活の知恵を生み出し、春の到来に喜びを与えてくれる。除雪もしなくて済めばそれに越したことはないが、その日の状況で雪をどう処理するかを考えると終わったときの達成感を味わえる。スキー場に行くまではそれなりに手間はかかるが、思いっきり滑った後の爽快感はたまらないものがある。私にとって雪は受け入れがたいものではなく、故あってこうした雪のある土地で生活することになったのであるから雪をポジティブに考え、うまくつき合っていくのが楽しい冬の過ごし方だと思っている。
(写真は実家に帰ったときの一コマ。こんな雪の帽子をかぶれるなんて車もしあわせでしょう。(2008/1/1撮影))

世界的な権威のある医学雑誌「ランセット」(私も昔、自分の論文が掲載されることを夢見てがんばったものの遠く叶わなかった。「サイエンス」や「ネーチャー」と並ぶ超ハイレベルな学術雑誌)が2011年8月31日のオンライン版に日本特集号「日本の国民皆保険達成から50年」を出版した。新聞各紙(朝日・毎日・日経など)の報道で私はそのことを知り、原文を読んでみたいと思った。調べてみると日本国際交流センターのwebサイトに日本語訳が掲載されていることを知り、早速ダウンロードして読んだ。さらに、秋田県医師会が無料貸出をしているとのことで実物を手にとって読んでみた。その後。現物を手元に保存しておきたくなり、10月には日本国際学術交流センターから1冊購入した(郵送料込みで1600円、英語の原著論文が無料でついてくる)。全文を読んでみると日本の国民皆保険制度というのは世界にもまれに見るすばらしい制度で、先進各国から羨望の的になっていることを知った。
たいへん中身の濃い雑誌なのであるが、趣旨を要約すると、日本は第二次世界大戦の敗戦を乗り越え、1970年代後半までに世界有数の長寿国となった(ちなみに2009年の日本人の平均寿命は、女性86.4歳で世界1位、男性79.6歳で世界5位)、1961年に国策として国民皆保険制度が導入されて以来、保険給付は平等となる一方で、医療費はGDPの8.5% (参考までにOECD諸国中20位(2008年))と比較的低い水準に抑えられてきた、ということになろうかと思う。この特集号の中で池田奈由氏は「なぜ、日本国民は健康なのか」という論文でまず無償義務教育の実施をあげている。この制度のおかげでほぼすべての女児が小学校に通うようになり、母親の教育水準と識字率が上昇したことで5歳未満の死亡率が大きく低下した(1950年の5歳までに死亡する割合は出生1000人あたり80人だったものが1965年には20人まで減少)という。また1960年代後半からの減塩キャンペーンなど国民レベルの啓発運動とともに、国民皆保険制度の恩恵で降圧剤など費用対効果の高い医療技術が普及し,高血圧患者が減って脳血管疾患による死亡率が低下したことも日本人の平均寿命の伸延につながったとしている。さらに日本人の生活様式のうち、衛生への配慮、健康意識の高さ、日本食のバランスの良さも日本人の健康を改善させた要因に上げられている。
一方で、日本人の成人死亡の主要な因子は喫煙と高血圧であると指摘し、喫煙関連死は年間129,000件、高血圧関連死は年間104,000件と報告している。こと喫煙に関しては喫煙率が先進国に比べてかなり高く(成人男性で約50%)、政府による喫煙規制の甘さに苦言を呈し、タバコ消費を抑制する政策介入が必要だと述べている。実は先進各国の中でがんの死亡率が減少に転じてないのは日本だけであり、タバコ対策の遅れががん死亡増加の大きな要因になっているのである。
ランセットは高齢化と雇用形態の変化、経済構造の変化で国民皆保険制度が持続できるかという課題を示し、現状で四つに分かれている(大企業従事者+公務員、中小企業従事者、自営業者、後期高齢者)社会保険を統合すべきという提言をしている。クリストファー・マレー米ワシントン大教授は特集号のコメント欄で日本の経済停滞、政治の混乱、高齢化、タバコ規制の不十分さを指摘し、「対策をとらなければ世界での平均寿命の順位が落ちていくかもしれない」と警鐘を鳴らしている。このように私はこの特集号で日本人の健康について歴史、現状、未来について相当多くのことを学んだ。皆さんにもぜひ一読をお勧めする(ランセット日本特集号は約100ページで図表も豊富で読みやすく、時間もさほどはかからない)。願わくは、党利党略だけを考え、「国民の健康を守る」ことを忘れた永田町の政治家諸氏全員に読んでもらいたいものだ。
(写真はランセット日本特集号日本語版(右)と英語版(左)(2012/1/18撮影))

2012年が始まった。多くの年賀状には「今年こそはいい年にしましょう」というような昨年とは違う新たな年に対する期待が込められていたと感じた。私は年末に新潟の実家に帰り「おふくろの味」を味わい、後は自宅で録りためていたテレビ番組を見た。私にしてはめずらしく目新しいことはほとんどしなかったお正月になった。そんなゆったりした時に自分なりに今年の目標を考えてみた。
まず、仕事が第一になることは当分変わらないと思っている。それは医師としての本分であるし、すずきクリニックの院長としての責務でもあるからだ。ただ、今年考えているのはその内容で、義務感に背を押されてとか、否応なしにといった仕事にはしたくない。やっている自分に楽しさがあり、達成感も欲しい、時には自分に仕事のご褒美をあげられるようにしたい。ここで大切なのは自分だけの満足感のためだけではなくスタッフのみんなとも同じ感覚を共有すべきという点だ。開院して5年が経過し自分なりにそのためのノウハウは身につけてきたつもりだが、もう少し磨きをかけたいと思っている。
さて、患者さんに対する視点をどうするかという点もたいへん重要だ。基本的には今まで通り「患者さんの満足度向上」を目指すことに変化はない。患者さんも千差万別で同じ症状、同じ疾患に対して同じ対応をとっても満足度は違ってくるので、目の前の患者さんが何を求めてすずきクリニックに来院したのかを患者さんの言葉や態度で「読む」ことが必要になる。さらに私だけではなくスタッフ全員で患者さんの気持ちを受信する「アンテナ」感度を上げ、その情報を上手く共有するシステムの性能を上げたいと思っている。
ここで、いつも問題になるのは患者さんの満足と医療従事者の思いが一致しない場合があるということだ(例えば「カゼには抗生物質が必要」、「点滴すれば病気が早く治る」、「睡眠薬は飲むとクセになる」といったこと)。これは永遠の課題だと思うが、誤った知識に対しては患者さんの満足度を優先させることはせず、時間をかけても正しいことを知ってもらうようにしたい。安易な妥協は医療従事者の満足度を下げ、自分で自分の首を絞めると考えている。もう一点、別の課題がある。すずきクリニックの受診者を対象に行ったアンケート調査(昨年の10月実施、回答者1,295名)で「今後、クリニックに望むこと」の上位3項目は診療時間の延長、夜間の対応、予約枠の拡大だった。いずれも実現すれば患者さんの満足度向上にたいへん貢献すると自認しているが、現時点ではそういった方向性を打ち出す予定はない。まずは現有資源内で改善を図り、体制を整えた上での対応としたい。
(写真は今年の年賀状の図、(2011/12/23作成)

音楽を聴くことは私の中学生以来の趣味であり楽しみだ。最近はもっぱらCDからPCに取り込んだ音楽ファイルを再生するか、そのファイルをウォークマン(iPodではない)に転送して聞くかのどちらかで、CDをコンポで再生することはほとんどなくなった。家の環境の問題からコンポで大きな音を出すことができないのとCDをいちいち入れ替えるのがかなりの手間になったからだ。PC上でx-アプリのようなソフトウェアを使えば、音楽、写真、動画、ポッドキャストなど、さまざまなコンテンツの取り込み、再生、編集、転送がたやすくできてしまうので以前の環境に戻れないことも理由にあげられる。
PCで音楽を聴く場合にはPCに付いているジャックにヘッドフォンをつなぐか、あるいはPC用のスピーカーに接続することになる。私の場合、仕事をしながら音楽を聴くことが多く、音質に大きな不満があったわけではない。しかし、ある日「PCオーディオ」を特集した雑誌を読んで、CDはCDプレーヤーで再生するより、いったんPCに取り込んでから再生する方が音質がよくなるという事実を知って驚いた。CDプレーヤーではCDのデジタル信号を読み込むと同時にアナログに変換して出力しているが、PCに取り込む場合はデジタル信号をエラーがなくなるまで何度も読み込みを繰り返し、正確なデータを書き込むことができるというのがその理由だ。さらに、PCから出力するときもPC内部でデジタルからアナログへ変換するよりも、デジタルデータのまま出力し、外部機器で高精度にアナログ信号に変換すると音は格段に変わることを知った。
この外部機器はDAC(digital analogue converter、デジタル/アナログ変換器)という名称で1万円以下のものから10万円を超えるものまでピンからキリまである。早速、いろいろ検討した結果、私が入手したのは「NuForce icon μDAC2(「ニューフォース アイコン ミューダック2」と読む、定価15,000円)」だ。ここから聞こえる音は今まで聴いていた音とはまったく別物だった。まず高音から低音までどの音も明瞭に聞こえる。さらに音場が左右に大きく広がった。今までは中心付近からしか聞こえてこなかった音が目の前の広い範囲から聞こえてくるのだ。その結果、音の解像度が格段に上がった。ボーカル、ギター、ピアノ、バイオリンなどそれぞれがどこに位置しているのかが手に取るようにわかる。生きた音が伝わってくるようになった。これまではなんて貧弱な音を聞いていたんだろうとショックを受けた。
このDACはUSBバスパワーで駆動するので特別な電源は不要である。大きさもH68mm×W21mm×D42mmと手のひらに収まるサイズで、重さも87gと持ち運んでも苦にならない。筐体の質感も高級感があり、動作ランプはLEDライトでこれもかなり好感度アップに貢献していると思う。私は価格以上の恩恵を感じており、これなしでPCの音楽を聴く気にはまったくなれない。会う人すべてに薦めている日々だ。
今年のブログはこの3日連続掲載で終了する予定だ。今年1年間の新規掲載は36本で、ほぼ10日に一本の割合になる。まあ、カメのようなペースではあるが継続できているので自分としては良しとしたい。
(写真は私のPCの側らで小さいながらも存在感を示すNuForce icon μDAC2(2011/12/26撮影))

恒例のプロペシア使用レポートの時期となったので6年間の使用経験を報告する。男性型脱毛症に対して現在プロペシア(一般名:フィナステリド)を使用中の皆さん、ならびにこれからプロペシアで治療を始めることを考えている皆さんの一助になれば幸いである。私は2005年12月のプロペシア(1mg)発売当初から内服を始めた。それ以後の経過に関してはこのブログ内の記事(2006年12月14日、2007年12月2日、2008年12月30日、20010年1月3日、2010年12月26日付のブログ)を参照されたい。念のために申し添えるが、プロペシアの発売元であるMSD(株)(旧万有製薬(株))から情報提供は他の医師同様に受けているが、利益供与や薬剤提供は一切受けてない。プロペシアはすべて自費で購入している。
今までの経過をまとめると以下のようになる。最初に効果を実感できたのは使用開始後6か月経ってからであった。これはプロペシアのパンフレットに記載してある通りで、最初の半年間に効果が見られないからといってあきらめるのは早いようだ。その後、3年間、毎日内服し、写真のようにかなりの効果が得られた。効果があったので2009年1月からは2日に1錠と半分に減量してみたが、6か月ほど経過すると明らかに毛髪の量が減ってきたので、2009年7月からは再び1錠を毎日内服し、現在に至っている。
このプロペシアの効果を一番に実感しているのは私より、私が通っている理容室のスタッフの方だ。内服して半年ほど経過したときに「先生、髪の毛に何か使ってる?」と早くも毛髪の変化に気づいてくれた。プロペシアの効果と知ると納得してもらえ、当初、貧弱だった頭頂部にはパーマはかけられないと言われていたものが、最近ではパーマを全体にかけてもらえるようになったのは大きな効果だと思う。スタッフの方の話ではプロペシアの効果は薄い頭頂部より、濃い側頭部に強く発揮されており、この点ではまだ課題が残る。
さて、昨年のレポートで毛髪量は2008年あたりをピークに、2009年から徐々に減少傾向にあることを報告した。今年の写真でもその傾向は残念ながら止まっていない。内服開始当初と比較するとまだ明らかに優っており、今でも周囲の人達から「先生、本当に髪の毛増えたねぇ」とお褒めの言葉を何度かいただいているのであるが、写真上はプロペシアの効果も限界に達したようだ。まあ男性においては年齢とともに毛髪量が減るのは生理的なので、ここは潔くこれ以上の増毛効果は諦め、現状維持をめざすことにする。
(写真は上から、プロペシア内服前(2005/12/20)、内服後1年(2006/12/13)、内服後2年(2007/11/28)、内服後3年(2008/12/24)、内服後4年(2009/12/10)、内服後5年(2010/11/25)、内服後6年(2011/12/4)の私の毛髪の状態。撮影は比較のため必ず散髪当日に、同じ場所で、同じ条件で行った。)